財務戦略担当役員メッセージ

「安定した財務基盤」はサステナブルな
企業経営において必要不可欠なファクターです。
これからも健全な財務から創出される
キャッシュ・フローの積極活用を通じて、
企業価値向上の実現に努めてまいります。

取締役 兼 常務執行役員

財務戦略担当

大代 卓

財務方針

前中期経営計画「JT-2023 経営計画」の振り返り

前中期経営計画(以下、前中計)「JT-2023 経営計画」の振り返りですが、前中計初年度のコロナ禍における想定以上の特需とその後2年間の反動による影響もあり、KPIとしていた営業、財務の各目標の大半は未達に終わりました。

しかしながら、各到達目標に比して「財務基盤」における各指標は押しなべて健全な水準を維持発展させています。

前中計期間における資産の拡大に対して、期間途中に収益認識など会計基準の変更などがありながらも、自己資本比率は45%台を堅持し、リース費用を除く店舗を中心とした、期間合計270億円超の設備投資のキャッシュアウトに対して、ネット有利子負債は5億円程度減少するなど、財務そのものの量の拡大に伴う質の充実は確実に進めることができました(ネット有利子負債=有利子負債―現預金)。

特に前中計期間中の柱であった、新物流センターの本格稼働や、大阪日本橋地区再開発といった施策への取り組み、KAM※の重要課題である店舗スクラップへの対応なども上記財務規律の中で、滞りなく実施、完了できたことはこの3年間の成果として特筆できるものであると考えています。

※監査上の主要な検討事項

資本効率について

昨年4月、当社株式は東証プライム市場に移行しましたが、今年3月のJPX(日本取引所グループ)からの要請に基づく、いわゆる「PBR1倍割れ」に対する取り組みの強化が今まさにマーケットから求められています。
今般発表した中期経営計画「JT-2025 経営計画」(以下、新中計)では、この取り組みの強化における資本効率の考え方の基礎として、当社グループにおける「株主資本コスト(CAPM)」・「加重平均資本コスト(WACC)」を示しました。

確立された計算式がない中で、できる限りスタンダードな考え方から算出される「資本コスト」をメルクマールとし、この数値をベースとしたKPIを設定したうえで、バックキャスト思考による中長期的なビジネスモデル、持続的成長への展望を開いていく計画を、この新中計で策定しました。「株主資本コスト」を上回る「ROE」、「加重平均資本コスト」を上回る「ROIC」を確保
し、キャッシュ・フローの積極活用を通じて、企業価値向上を目指します。

キャッシュアロケーション

新中計における資本配分については営業キャッシュフローを3カ年累計で、400~450億円程度創出される計画をベースとしています。

このキャッシュの配分を既存事業、M&A、サービスインフラの充実といった成長戦略を中心とした投資に7割程度割り振り、残りを株主還元や有利子負債の圧縮に活用する計画としています(前中計3カ年累計営業キャッシュフロー合計約350億円)。

キャッシュフロー以外の事業活動において経費として吸収される人的資本やシステム・DX関連など無形資産への支出についても積極的な運用を強化し、収益力向上に見合う体制構築に積極的に取り組んでまいります。

株主還元

当社の配当政策の考え方は株主総会の招集通知などにも記載のとおり、業績の状況及び配当と内部留保のバランスに配慮しながら安定した配当を継続することを基本とし、それに加えて配当性向30%以上を持続することを新中計でも公表しています。

ちなみに2022年度は、一株当たり75円配当を維持しました(配当性向40.2%)。

今後については、株主還元のさまざまな考え方(自社株買い、総還元性向、DOE※など)があり、都度情勢に適合させながら、最適化を目指して検討してまいりたいと考えており、方針決定次第遅滞なく開示させていただきます。

※ DOE=株式資本配当率

 

資本政策

政策保有株式については、CGコード報告書に記載のとおり、円滑かつ良好な取引関係の維持やサプライチェーンの構築など保有目的の定性的な検証のほか、純資産に占める割合、取引関係から得られる利益や配当などの定量的な検証を四半期毎に取締役会で行い、保有意義が希薄化したと判断される株式などについては当該企業などとの対話・交渉を実施しながら、適宜処分を進める方針とし、前年度は4銘柄の処分を行いました。

2023年3月末現在における政策保有株式は26銘柄で時価総額約73億円となっています(純資産に占める割合は約7%)。

保有株式の純資産に占める割合は議決権行使助言会社などの定める基準に比しても、決して高いレベルにあるものとは認識しておりませんが、プライム市場の上場企業に求められる使命である、多様な投資家に評価される時価総額(流動性)を保持すべく、一部持合となっている株式についても流動性確保の観点から、当社方針に沿って、処分に向けた地道な交渉を継続していきます。

幅広い投資家とのエンゲージメント

今後を展望するうえで、さらなる株主の多様化が重要なテーマの一つです。地道な活動の結果、個人株主数は2023年3月末時点、単元株主数ベースで前年から5,780名も増加(約6割増=3月末株主数15,239名)と飛躍的に増加し、小売業である当社の店舗やECでのファンづくりに貢献しています。詳細は、統合報告書の個人株主とのエンゲージメント欄をご参照ください。

一方で、現在、8%程度の外国人投資家比率を、東証が求めるプライム市場の求められる基準に沿い、中期的には倍以上に引き上げることを目指しています。

各種資料の英語での開示・提供は勿論のこと、オンラインを活用した機関投資家などとの個別IRミーティングには、原則社内の全取締役が参加しています。

また当社が属する小売業に明るい証券アナリストの方々との積極的な面談機会を設け、将来のICT(情報通信技術)による家電の高度化、日本独自の家電量販店のビジネスモデルと生活サービスビジネスとの親和性をご理解いただくことに努めるとともに、現在進めている当社独自の営業戦略とともに価値創造ストーリーの実践について、投資家の皆さまと並行して具体的な発信を行っています。

今後とも、東証プライム市場上場企業として、より一層積極的かつ資本効率を意識した成長投資と、株主還元の強化をバランス良く進め、IR活動をより一層活発化させ、幅広い投資家の皆さまに「中長期の投資先」として評価頂けるよう努めてまいります。