Joshin 最大の課題は、資本効率の改善です。規律ある「回収と投資」を実行し、持続可能な企業価値を創出してまいります。

前中期経営計画「JT-2025 経営計画」振り返り

業績の課題と財務健全化の成果

 前中期経営計画「JT-2025 経営計画」の最終年度実績は、激変する事業環境の影響を強く受け、目標として掲げていた水準を大幅に下回る厳しい結果となりました。しかしながら、この過程において当社は、棚卸資産の適正化を起点とした資産の効率的運用や、保有先との建設的な対話に基づく政策保有株式の縮減・解消に注力してまいりました。これらの取り組みにより、資産勘定の過度な膨張を抑制し、資本効率を高めるための財務基盤の整備は着実に進展しました。
 その結果、強固な財務の安定性を引き続き維持・確立しています。特に、キャッシュ・フロー面においては、各種施策の確実な実行によって営業キャッシュ・フローが増加し、フリーキャッシュ・フローが大幅に改善しました。これにより、それまで増加傾向にあったネット有利子負債の削減(デットの圧縮)を実現し、次なる成長ステージ(新中期経営計画「JT-2028経営計画」(以下、新中計))に向けた健全な財務体質へのシフトは進捗しています。

 

(連結)財務指標抜粋

(百万円)
①2022年度 ②2023年度 ③2024年度 ④2025年度 ④-①/累計(②~④)※2
総資産 223,218 232,775 231,503 228,813 5,595
純資産 100,698 104,613 104,665 105,364 4,666
自己資本比率 45.1% 44.9% 45.2% 46.0% 0.9%
参考)棚卸資産 76,229 78,369 70,298 69,867 △6,362
ネット有利子負債※1 43,194 49,212 38,317 33,400 △9,794
ネットD/Eレシオ(倍) 0.43 0.47 0.37 0.32 △0.11
営業キャッシュ・フロー 7,119 2,278 16,374 13,085 31,737※2
投資キャッシュ・フロー △9,070 △4,806 △1,815 △3,505 △10,126※2
フリーキャッシュ・フロー △1,951 △2,527 14,558 9,579 21,610※2
財務キャッシュ・フロー 2,360 3,649 △10,741 △12,758 △19,850※2
※1 ネット有利子負債=有利子負債-現預金  ※2 ②2023年度~④2025年度累計

「JT-2025 経営計画」実績

(百万円)
2024年度実績 2025年度計画 2025年度実績
営業利益 3,688 11,000 5,422
ROE(自己資本当期純利益率) 3.3% 8.0%以上 3.1%

 表題にもあるとおり、当社経営上の重要課題はROE(自己資本当期純利益率)に代表される資本効率が低位にとどまっていることです。
 小売業では投下資本の大半が店舗に集中するため、店舗資産の収益性低下は資本効率の悪化に直結します。
 収益性が著しく低下した資産に対する減損損失は利益を圧迫する大きな要因です。
 遊休資産(政策保有株式を含む)の処分益も、恒常的な収益力の向上にダイレクトにはつながらず、減損損失は最終的な利益水準の安定化を妨げる一因となっています。(下記参照)

 

「JT-2025 経営計画」連結損益抜粋

(百万円)
2023年度 2024年度 2025年度 中計期間累計
固定資産売却益+投資有価証券売却益 1,322 4,141 1,976 7,439
減損損失 1,105 1,448 1,392 3,945
当期純利益 4,891 3,407 3,280 11,578

新中期経営計画「JT-2028 経営計画」を支える3つの財務方針

強固な財務基盤の安定維持と、資本コストを意識した「規律ある成長投資」の実践

 資本効率の最大化を追求するうえで、強固な財務健全性の確保は不可欠な大前提です。
 新中計の実行に向け、当社は以下3つの財務方針を徹底し、持続的な価値創造へつなげてまいります。

1. 財務基盤の安定維持

2. 営業キャッシュ・フローの最適配分

3. 資本コスト、株価を意識した効率経営の推進

1. 財務基盤の安定維持 (バランスシートマネジメントの徹底)

 当社の自己資本比率はおおむね45%程度を維持しており、ネットD/Eレシオも0.5倍を下回る水準で推移するなど、健全な財務基盤を構築しています。
 今後も持続的な企業成長の原資となる財務の安定性を堅持してまいります。
 特に、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮・改善と、運転資本及びネット有利子負債のコントロールに直結する在庫水準の適正化に注力します。
 これらを通じて、バランスシート(B/S)全体のクオリティを高める効率的なアセットマネジメントを継続してまいります。

2. 営業キャッシュ・フローの最適配分 (成長投資と株主還元の両立)

 新中計期間においては、事業活動から創出される営業キャッシュ・フローを原資のベースとし、持続的な企業価値向上に資する「将来への積極的な成長投資」と、株主の皆さまへの「実効性の高い利益還元」の双方を、最適なバランスで実行(アロケーション)してまいります。

 

2028年度目標(「JT-2028 経営計画」)

2028年度目標
営業利益 100億円以上
ROE 7.0%以上

直近資本コスト(当社基準)

株主資本コスト(CAPM) 8.47%
加重平均資本コスト(WACC) 4.25%

 新中計では、事業から創出された営業キャッシュ・フローをベースに将来の事業成長に資する積極的な投資と、「株主還元」の両立をバランスよく実行してまいります。

3. 資本コスト、株価を意識した効率経営の推進 (PBR1倍超へのコミットメント)

 当社は、資本コストや株価を意識した経営の実践に向け、持続的な価値創造ストーリーを明確に策定し、これを具体的な事業施策へと落とし込んでいます。
 今後も株主・投資家の皆さまとの双方向のエンゲージメント(対話)をさらに深め、市場の期待に応えることで、早期のPBR(株価純資産倍率)1倍超の達成に向けた経営を強力に推進してまいります。
 特に、次年度より適用が予定される新リース会計基準の施行を視野に入れ、資本効率改善の中核施策として、店舗運営の構造改革に伴う有形固定資産の圧縮などに着手しています。
 オンバランス化による資産膨張をコントロールしつつ、さらなるバランスシート(B/S)の筋肉質化と資産効率の向上に積極的に取り組んでまいります。

キャッシュ・アロケーション

適切な財務レバレッジと規律ある財務戦略による、持続的な価値創造ストーリーの実現

 当社は、新中計における資本配分について、3カ年累計で350~400億円規模の営業キャッシュ・フローを創出することを前提に、戦略的なキャッシュ・アロケーションを計画しています。前中計における営業キャッシュ・フローは3カ年累計で約320億円となり、業績目標の達成度合いに比してキャッシュ創出力は着実に向上しました。今後は、この強化された資金創出力をベースに、適切な財務レバレッジの活用なども組み合わせ、将来の成長領域への投資を一段と加速させてまいります。具体的な配分として、既存事業の強化、M&A、及びサービスインフラの拡充といった成長戦略を中心とする投資に対し、創出キャッシュの70~75%程度を重点的に振り向けます。
 また、キャッシュアウトとして販売管理費で処理される人的資本、システム、DX関連などの無形資産投資についても、将来の持続的な事業成長を担保する先行投資と捉えて積極的に推進します。
 これら成長投資と株主還元のバランスを最適化し、規律ある資金運用を徹底することで、資本効率の最大化を図ってまいります。

株主還元

規律ある資本配分に基づく、実効性の高い株主還元

 当社の株主還元方針は、業績動向及び将来の成長投資に向けた内部留保とのバランスに配慮しつつ、安定的な配当を継続することを基本としています。
 具体的な還元基準としては、配当性向40%以上に加えてDOE(株主資本配当率)2.5%以上を導入し、業績変動に左右されにくい、より強固で安定的な株主還元の実現を目指してまいります。
 この方針の一環として、前年度より中間配当制度を導入し、年間を通じた株主還元の機会を拡充しました。
 今後も株主還元の強化を経営の最重要課題の一つとして位置づけ、自己株式取得を含む総還元性向の考え方や、株式分割などによる投資単位の引き下げといった市場流動性を高める施策についても、資本市場の動向を勘案しながら、最適な在り方を柔軟に検討してまいります。
 なお、多くの個人株主の皆さまからご好評をいただいている「株主優待制度」につきましては、利便性向上及び環境配慮の観点から、今回より電子化(デジタル移行)へと刷新しました。

資本コストや株価を意識した経営の実現

資本効率を最重要視する「JT-2028 経営計画」:店舗運営の効率化から始まる資本の最適化

1. 基本的な考え方

 当社は、資本配分の根幹である純資産の最適化に向けて、定例の見直しに加え、会計面からの深度ある議論や、適切なスクラップアンドビルドを推進しています。
 最適化された純資産ベースで事業の収益力を強化することは、EPS(1株当たり当期純利益)の持続的な拡大に直結します。
 この持続的な成長が市場からの期待(将来成長への信頼)を高め、PER(株価収益率)の上昇を通じたPBR向上へと結実するものと考えています。
 この財務ロジックに基づき、新中計では資本効率を重視した経営へシフトし、店舗運営の効率化をはじめとする各種施策を実践してまいります。

2. 最適資本構成に向けた取り組み

・自己株式の取得(市場流動性を勘案した機動的な資本政策の実行)

 当社の発行済株式数は2,800万株と比較的コンパクトな規模であるため、一律に定常的な取得枠を設定するのではなく、市場環境や流動性を総合的に勘案した機動的な資本政策を行っています。
 昨今の政策保有株式の縮減動向に伴い、まとまった株式の市場放出などが生じた際には、既存株主の皆さまの利益(希薄化防止など)を最優先に活かし、機動的な自己株式取得を検討・実施してまいります。
(2025年度末時点の自己株式保有数:約145万株、発行済株式総数に対する割合:約5.2%)

 

・配当政策(財務健全性と機動性を活かした最適な還元)

 株主還元の強化は経営の最重要課題の一つであり、今後も最適な還元水準の維持・向上に努めてまいります。
 当社の適正な株式規模を活かすことで、会社のキャッシュ・フローへの急激な負荷を抑えつつ、業績動向に応じた柔軟かつ実効性の高い配当政策を展開してまいります。

 

・ 政策保有株式の縮減(資本効率の向上とコーポレート・ガバナンスの進化)

 コーポレート・ガバナンス報告書に開示している方針に基づき、保有意義の厳格な検証と保有先との建設的な対話を重ね、合意の得られた株式から順次売却を進めています。
 2025年度においては、政策保有株式及び純投資目的の株式の売却により約16億円の投資有価証券売却益を計上し、当期純利益の押し上げに貢献しました。
 今後も資本効率のさらなる向上に向け、原則として新たな政策保有は行わない方針のもと、政策保有株式の純資産比率を「3年後に3%未満」とする目標を掲げ、縮減を加速させてまいります。

(百万円)
2023年度 2024年度 2025年度 2026年度計画 2027年度計画 2028年度計画
政策保有株式残高 7,775 5,781 5,359 4,000 3,500 3,000
対純資産比率 7.4% 5.5% 5.1% 3.8% 3.3% 2.8%

最適事業ポートフォリオの構築と成長投資の推進

 当社は、サステナブルな企業経営の実現に向け、最適な事業ポートフォリオの構築と、それを支える成長投資を積極的に推進しています。その大前提として、全社的な経営指標であるROE(自己資本当期純利益率)及びROIC(投下資本利益率)を重視し、資本コストを上回るリターンを意識した投資判断を厳格に行ってまいります。
 今後も営業戦略担当役員との連携のもと、規律ある効率経営を大前提とした積極的な投資を展開してまいります。
 また、前年度より当社の設備資産の大半を占める店舗資産の有効活用(最適化)に向けた取り組みを本格化させています。具体的には、金融機関や証券会社などとの広範なリレーションを接点として活用しながら、家電領域の枠を超えた各種小売業とのアライアンス(店舗相互連携など)を推進しています。これにより、既存店舗の資産価値を最大化させ、総資産回転率の向上と資本効率のさらなる改善に努めてまいります。

株主・投資家とのエンゲージメント

市場との対話を深め、中長期的な企業価値を最大化する

(株主分布推移要約)

2023年度末 2024年度末 2025年度末
株数(千株) 比率(%) 株数(千株) 比率(%) 株数(千株) 株数比率(%)※ 増減
株数(千株) 比率
金融機関 5,294 18.91 4,396 15.70 3,548 12.67 -848 -3.03
事業法人 7,592 27.11 7,264 25.94 7,018 25.06 -246 -0.88
持株会・役員など 2,315 8.27 2,304 8.23 2,356 8.41 52 0.19
自己株 1,653 5.90 1,454 5.19 1,454 5.19 0 0.00
実質固定株式 16,855 60.20 15,418 55.06 14,376 51.34 -1,042 -3.72
信託口など 3,599 12.85 4,181 14.93 4,051 14.47 -130 -0.47
海外株主 2,102 7.51 2,029 7.25 3,478 12.42 1,449 5.17
個人など 5,445 19.45 6,372 22.76 6,095 21.77 -277 -0.99
実質流動株式 11,145 39.80 12,582 44.94 13,624 48.66 1,042 3.72
※当社基準

 当社は、国内外の投資家属性に応じたIR活動を通じ、多様な「ファン株主」の獲得に取り組んでいます。
 その結果、2026年3月末時点の単元株主数は前年度比1,890名増の24,685名と、着実に増加しています。
 前年度の増加の大半は海外投資家によるものであり、PBR向上への寄与を含め、その貢献度は大きいと認識しています。英文同時開示の徹底や、対面・オンラインでの個別IRミーティングなど、地道なエンゲージメントの積み重ねが実を結んだものと考えています。
 また、生活者に身近な小売業の強みを活かし、個人株主の保有比率も2割超と安定的に推移しています。
 さらに、証券アナリストの皆さまとも建設的な対話を重ね、当社の独自性や差別化戦略への理解促進に努めています。これらの市場の声を、資本コストや株価を意識した経営戦略の実践へ活かしてまいります。
 今年度からは、本格化するTOPIXの見直しを見据え、政策保有株式の縮減や固定保有株式の市場放出を進めています。これを通じて、株価向上と並行して株式の流動性向上にも注力してまいります。今後も東証プライム上場企業として、資本効率に配慮した成長投資と株主還元の最適バランスを追求するとともに、IR活動を一層活発化させ、中長期の投資先として選定いただけるよう努めてまいります。