営業戦略担当役員メッセージ

ファンベース戦略とドミナント戦略のさらなる進化によりJoshinのあるべき姿を目指します

「JT-2025 経営計画」1年目を終えて

 2023年度は、コロナ禍特需、定額給付金で大きく伸びた2020年度の反動が継続、3年間売上高が横ばいで推移していますが、リアル店舗の売上高は着実に増加しています。家電店舗数は前期と同数ながら、1店舗当たりの売上高は2022年度の14.8億円から2023年度は15.2億円となり、販売力の強化に向けた取り組みが着実に成果に結びついていると考えています。売上総利益率も、2022年度の25.4%から2023年度は26.0%に到達しました。また、EC事業は収益力の強化を目的とした構造改革の取り組みに着手した結果、売上高は減少しましたが、営業利益率・額ともに改善し、今後に向けて良い兆しが見えてきたと考えています。

リアル店舗業績推移
EC事業業績推移

マーケットと社会の変化を予測しあるべき営業を追求する

 人口減少に伴う労働人口の減少、物流の2024年問題に代表される法令・規制、超高齢化社会におけるお客さまニーズの変化など、これから先も当社を取り巻く市場環境は目まぐるしく変化していくと考えなければなりません。賃金と物価の上昇による経済の好循環を目指す経済政策に対し、我々の事業戦略をどのようにリンクさせ、家電業界に消費を呼び込めるかが今後の大きなポイントになってくると考えます。
 一人の消費者における家電の買い替え期間を20歳から70歳までの50年間と仮定すると、ライフサイクルの長い商品(仮に10年とした場合)、人は一生に6回、短い商品(仮に5年とした場合)でも12回、家電を買い替えることになります。この家電の買い替えに対する考え方が、高齢者の人口比率増加により、本当に必要な価値のある買い物をしたい、価格は価値を得るために必要なコスト、という意識を持ったお客さまの増加につながっています。それに伴い親世代を見て育った若年層の家電に対する考え方にも変化が現れており、価値観や意識の変化は、例えばサブスクリプションをはじめ「所有」から「使用」することを重視する消費形態にみられるニーズの多様化などとして現れ、それらの意識の変化は作り手、売り手の変化にもつながり、モノづくりから流通という市場の形を今後大きく変えていく可能性があります。それらの変化に対応するため本業の家電販売に加えリユース、レンタルなどのサポートビジネスをしており、新規の領域に積極的にチャレンジしていきたいと考えています。

SWOT分析

「JT-2025 経営計画」

 当社グループでは中期経営計画「JT-2025 経営計画」(以下、本中計)に2023年度から取り組み始めました。「お客さまの暮らしに寄り添う『コンシェルジュ』へ」を本中計のテーマとし、従来の数による成長ではなく、質による成長を目指すことで収益力、すなわち稼ぐ力の強化に取り組んでいます。事業の成長は「質」(営業力)と「数」(店舗数、売場面積)のバランスが重要であり、優先順位は「質」の向上と考えています。「質」の向上は当社グループが目指す、収益性の向上、収益体質、収益基盤づくりで、「質」の向上を前提とした「数」の拡大が本中計での目指すべき姿であると考えています。その核となるものがファンベース戦略であり、1948年5月の創業以来、社内で脈々と受け継がれてきた社是「愛」の精神を起点としたJoshinの営業そのものです。これらをファンベースの考え方に基づいて再定義、これまで積み上げてきた情緒的価値(信用、信頼、安心感)に加えて、デジタルの力を融合した、よりお客さまに寄り添った機能的価値(多彩な情報提供、タイムリーな提案)、この2つの価値提供により「地域社会の成長を支え、人と未来に貢献する企業」の実現を目指してまいります。

ファンベースが当社グループの成長戦略の中心

 ファンベースとは、創業時から育んできた経営思想を形容したものであり、その思想を形にする取り組みがファンベース戦略と考えています。ファンベース戦略の原点は、お客さまが「購入前」「購入時」「購入後」に何を期待されるのか、これらを深く理解し、より高度化した価値として提供し続けることと考えています。お客さま一人ひとりのニーズに応える商品・サービスコンテンツの充実を図りつつ、「購入前」は情報提供と提案、「購入時」は価格と提案、「購入後」はアフターサービスが最も大きなファクターとなり、すべてのベースは接客力です。当社グループでは、情報提供は販売促進部、価格は商品部、提案力は営業部、接遇はCS推進部、アフターサービスはジョーシンサービス株式会社が担っており、これらを支える基盤が情報システムであり、その役割は情報システム部が担っています。各部署がファンベースを意識した施策を展開し、各セクションの連携、各セクションの提供価値最大化が当社のファンベース戦略と考えています。

いち商品・サービス、1回当たりのライフサイクル

 一件一件の地道な接客の積み重ねですが、当社グループの提供価値を認めていただいたお客さまが当社を支える顧客基盤となります。お客さまが繰り返し当社をご利用いただく行動、さらには自らのご利用にとどまらず、周りの方にも当社グループをお勧めいただく行動が、新たなお客さまの創出にもつながり、そこから発生する「ファン」の連鎖がファンベース戦略の大きな目的です。


 顧客ロイヤルティプログラムも2024年2月から「ジョーシンスマイルプログラム」としてスタートしました。年間来店回数、年間購入金額を基準とし、最上位ランクの会員さまであるVIP会員さまを「コアファン」、プラチナ会員さま、ゴールド会員さまを「ファン」とお呼びし、昨年より公表しています。アクティブ会員数(直近1年でご利用いただいた履歴のある会員さま)、年間来店回数、年間購入金額の推移をウォッチしてファンベース戦略の取り組みを強化しています。家電は、買い替え期間が数年単位となる耐久消費財であるため、お客さまの消費行動によっては「ファン」と定義されるお客さまがアクティブ会員さまにカウントされないケースもあり、絶対数を追いかけるのではなく、各指標の背景にある要因も含めてモニタリングしていきます。


 下図はアクティブ会員さまの推移をイメージしたものです。アクティブ会員さまは継続会員さまをベースに①増加要因が新規会員さま、復活会員さま(1年以上ご利用がなかった会員さまのご利用)の合計、一方で②減少要因は休眠会員さまで1年間ご利用のなかった会員さま、①②の差分が増加、減少要因となって現れます。出店を加速すれば新規会員は増えますが、出店速度が速くなり過ぎれば営業品質の維持に問題が発生しやすくなり、休眠会員さまの拡大要因になります。当社グループは「質」に軸足を置いた営業を実践しており、休眠会員から復活会員に戻っていただける数は確実に増加傾向にあります。この質に加えて「数」の力を掛け合わせることがアクティブ会員さまの増加につながると考えています。

アクティブ会員さまの推移

 当社グループの目指す成長戦略は、質の向上を前提としており、その前提条件下で数による成長、新規事業分野への挑戦があると考えています。質とは、営業品質を意味しており、その中で最も重要な資源である人的リソースは数と品質の確保が絶対条件となります。急激な店舗数、売り場面積、取り扱い商品の拡大に合わせて環境を整えなければ、人的リソースの毀損につながり成長を鈍化させてしまう危険性があります。あくまで質と数は、そのバランスが重要であり、お客さまへの提供価値の最大化を目指すファンベース戦略が、ゴールド会員以上の会員さまの拡大、アクティブ会員さまの拡大につながると考えています。当社グループが提供する「購入前」「購入時」「購入後」の提供価値は、それぞれれ「機能的価値」「情緒的価値」が含まれています。「機能的価値」は、価格やポイントなど同業他社が真似できる価値ですが、「情緒的価値」は簡単には真似のできない当社グループ独自の価値であり、その代表は①お客さまに後悔させない「商品提案力」 ②お客さま一人ひとりに寄り添う「接客力」 ③1948年の創業時よりお客さま宅内での設置、工事で培ってきた「技術力」と「信用力」です。これら強みによってファンベース戦略の進化を目指してまいります。お客さまとの出会いを大切にし、末長くご愛顧いただけるよう、「ファン」「コアファン」のお客さまとのリレーションシップをより強くするため、「Joshinファンミーティング」を定期的に開催し、2024年度から「ファンコミュニティ」の実施も計画しています。また、店舗の販売員を対象とした「Joshin接客ロールプレイングコンテスト」など、情緒的価値の創造に向けた取り組みも強化しています。会員さまの購入履歴情報に加えて、当社ECサイトでの「購入前」「購入時」「購入後」データなどの行動データの蓄積も開始、マーケティングオートメーションを使い、「ファン」「コアファン」のお客さまにタイムリーな情報提供を目指し、情緒的価値と機能的価値提供の融合により、よりレベルの高い価値提供の実現を目指します。

ファンベース戦略の整理
ジョーシンカード会員数の推移

 当社グループのファンベースはお客さまだけでなく、従業員、お取引先さま、株主さま、投資家さまを含めたすべてのステークホルダーにファンになっていただくことを目指しています。特にお取引先さまは、事業を支えていただいているパートナーであり、お互いを尊重し、どこまでも対等な立場でビジネスを成長させることを心がけています。株主さま、投資家さまにも、ファン、お客さまになっていただき、株主優待券でお得なお買い物をしていただく、業績向上によるご期待に応える配当の実現、株価の上昇、東京証券取引所から要請をされているPBRの改善を目指し、さらに投資をしていただく、Joshin経済圏での好循環をつくり出していかなければなりません。ファンベースはお客さまの枠にとどまることなくすべてのステークホルダーのファン化、コアファン化を目指すものです。

事業戦略

 当社グループの事業戦略は、祖業である家電販売が中核であり、2030年に向けては大きく変わることはないと考えています。この家電販売と、キッズランドブランドで展開する専門性・独自性の高いエンターテインメント事業を中心に、親和性の高い事業領域への取り組み、拡大で事業全体にアドオンさせるのが当社グループの成長戦略と考えています。その親和性の高い事業領域がリフォーム、モバイル通信、サポートビジネスです。2023年度の売上構成比は14%を占め、売上高の伸長は10%近くを記録しており、今後の当社グループ全体を牽引し「柱」となる事業へと成長することを期待しています。家電販売は大幅な拡大よりも、既存の資産を活かして収益性を高めてまいります。お客さまがより楽しく快適で豊かな生活を送るために、お客さまの課題に寄り添い、多様な提案によって課題解決に貢献してまいります。


 当社グループの掲げるドミナント戦略は、関西・東海・関東・北信越エリアの店舗網とEC事業の融合です。2024年度よりEC取り扱い商品のうち、今まで限定商品のみであった店舗受け取りをCD・DVDや大型商品を除く全商品に拡大したほか、大型商品、リサイクル対象商品についても店舗展開エリア外への配達も開始しました。これらの取り組みは、一昨年に稼働を始めた関西茨木物流センターに加え、東京物流センターを拡張、東西2拠点化が本格スタートしたことで実現しており、ドミナント戦略の基盤づくりを進めることができています。また、100%子会社であるジョーシンサービス株式会社において、訪問修理を行う自社サービスマン体制を再構築するため、まずは関西2府4県に新たに組織を立ち上げました。現状では個別の問題への対応手段、手法のレベルですが、導入を目指しているオンラインサービス技術を駆使した故障診断・見積もりなどとあわせて、お客さまの要望、期待に耳を傾け、社会価値創造、お客さまの課題解決につながる新たな仕組み、事業の創造を目指してまいります。


 これら事業戦略を支える基盤が情報システムです。基盤づくりは着実に進んでおり、家電を中心とした基盤事業のさらなる強化はもちろんのこと、リフォームをはじめとする成長事業を牽引し、新規ビジネスの創出にもつなげていきます。既存事業を核に、成長事業を軌道に乗せ、新規ビジネスにチャレンジする精神を成長のエネルギーに変えていきます。