取締役会議長メッセージ

未来を見据えたガバナンス改革で、企業価値のさらなる向上を目指していきます。

 

代表取締役会長

 当社は、コーポレートガバナンス・コードの公表から10年にわたり、ガバナンス体制の強化に継続的に取り組んでまいりました。しかしながら、これまでの体制強化が必ずしも十分な成果に結びついておらず、すべてのステークホルダーの皆さまの期待に応え切れていないという反省のもと、2025年6月開催の定時株主総会において監査等委員会設置会社への移行を決議いたしました。

〈ガバナンス体制の課題認識〉

 当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、取締役会の多様性確保、社外取締役の提言に基づく指名・報酬制度改革、取締役会の監督機能の強化など、さまざまな取り組みを進めてまいりました。(P.42「コーポレート・ガバナンス強化の変遷」参照)
 しかし、前中期経営計画(JT-2023経営計画)は未達成に終わり、現行の中期経営計画(JT-2025経営計画)においても、2024年度には主力の家電カテゴリーの低迷により業績の大幅な下方修正を余儀なくされるなど、企業価値の向上に向けた成長戦略は道半ばです。こうした状況を踏まえ、取締役会議長として、当社のガバナンス体制には以下の課題があると認識しています。

  • 業務執行に関する案件の多くを取締役会で決定しているため、意思決定の迅速性が損なわれている。
  • 取締役会の多様性を確保しているにもかかわらず、社外取締役の知見を成長戦略の議論に十分に活用できていない。
  • 取締役会と業務執行部門の連携が不十分で、取締役会の審議が短期的な業務執行に偏り、中長期的な成長戦略の議論に集中できていない。

 2024年度の取締役会の実効性に関する評価(P.51「取締役会の実効性評価」参照)においても、取締役会の機能強化が喫緊の課題であると位置づけられました。

〈課題の解決に向けた方針と取り組み〉

こうした課題に対し、取締役会は以下の方針を策定しました。

  • 業務執行に関する決定権限を大幅に委譲し、意思決定の迅速化と監督機能の強化を図る
  • 取締役会は、中長期の経営戦略や資本政策など、企業価値向上に資する重要事項を重点的に審議する

 この方針を実現するため、当社は監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へと移行し、取締役会は以下の2つの取り組みに注力しています。

  1. 中長期の成長戦略の深化と資本コストを意識した効率経営の推進(継続的な取り組み)
  2. 取締役会の機動性発揮とモニタリング機能の強化(新たな取り組み)

 監査等委員会設置会社への移行により、社外取締役の比率は75.0%、女性の取締役の比率は50.0%となり、取締役会の構成も大きく変革されました。しかし、形式的な整備だけでは取締役会の実効性は向上しません。
 従来の取締役会が十分に機能していなかったわけではありませんが、取締役会の大幅な権限委譲により業務執行と監督の機能が明確に分離された今、取締役会議長としての私の責務は、取締役会をその本来の機能に沿って運営し、すべてのステークホルダーの皆さまから信頼され、社会に必要とされる企業を目指すことだと考えています。
 今後は、業務執行部門において政策立案能力と推進力の強化を図るとともに、取締役会ではモニタリング機能の強化と社外取締役の知見を最大限に活かした中長期的な成長戦略の集中審議を進めてまいります。その実現に向けて、取締役会の審議事項について年間アジェンダを策定し、計画的かつ着実に取り組んでいます。
 今後は、企業価値の持続的な向上に資する重要事項を重点的に審議することで、取締役会の実効性をさらに高め、定着させていくことが取締役会議長としての私のゆるぎない決意です。