内藤 2025年、当社は機関設計を変更し、監査等委員会設置会社に移行しました。コーポレートガバナンス・コードが求めているのは、取締役会で中長期の経営戦略や会社の基本的な事項を十分に議論したうえで決定することです。監査役会設置会社の段階でも中期経営計画の策定に関する議論はなされていましたが、時間的な制約により経営戦略などの議論が不足しており、これについて現会長(当時の社長)が一番危機感を持っていたと思います。機関設計変更後の現在は、業務執行の決定に関する大半の権限を執行役員会に委譲し、取締役会は経営戦略などの議論に集中することができています。
山平 監査役会設置会社の時から執行部門への権限委譲は進めていましたが、やはりその決裁基準、特に経営戦略、経営の根幹に関わる部分は取締役会のアジェンダを変えなければという想いでした。コロナ禍当時の定額給付金で業績が大きく伸びた2020年度以降、その反動が継続したのですが、その際、経営戦略の根幹に関する議論やモニタリング機能の強化にさらなる工夫の余地がありました。マネージング型からモニタリング型へと進化させ、資本政策や成長戦略、人財戦略を含めた議論をより深めていくことが重要だと考えています。
高橋 私自身が一番感じていたことは、やはり会社が変わらなければならない。新たな知恵を生み出しながら中長期の戦略を考えるために、社外取締役の知見ももっと活用すべきだということです。ちょうどその頃、現会長から、執行と監督を分離して意思決定をスピードアップしてはどうかと相談を受け、二人で協議を重ねた結果、機関設計を変更することを決断しました。この変更を機に、もっとスピーディーな判断と変化を恐れない経営を遂行しなければならないと強く考えています。
内藤 当社の取締役会は、マネジメント型かモニタリング型かで言えば、ハイブリッド型でした。役員報酬の個人業績連動報酬における業績を評価するにあたって、マネジメント・モニタリング両面でそれぞれの貢献を測定しようとしましたが、モニタリングの側面は測ることが困難でした。これもあり、いっそのことモニタリング型に一気に変えようという結論に至ったのです。このように、私は機関設計変更の最大の目的はモニタリングに特化することだと認識しています。
山平 私も、ここ数年のモニタリング機能については、一層の充実が必要だと感じています。取締役会で決定した方針が執行側で確実に実行されているかを丁寧に確認すること、そして市場にお約束したことを着実に実現することが取締役会の大切な役割であり、この両輪をより力強く回していくことが重要だと思います。
高橋 取締役会のモニタリング機能を強化すると同時に、執行役員全員は経営者の感覚をより強く持って業務を執行してもらわなければなりません。自ら判断し、軌道修正を図り、新たな知見を見出すことによって一人ひとりが経営を牽引していく自覚が必要です。こうした意識改革こそが、当社が変わる一番のカギだと思います。
高橋 私が持つ危機感は、業界全体の危機感でもあります。国内・小売・家電は、いずれにおいても厳しい状況が続いています。しかし、そこで利益をあげ、強い姿を示してこそ、新しいことに挑むことができます。まずは家電で着実に成果をあげ、そこから広がる領域、新たな方向に当社を導いていきたいと思います。
山平 人口減少をはじめ社会の環境変化はきわめて速く、家電量販店のビジネスモデルにも進化が求められています。当社の事業は5つのカテゴリで構成していますが、基幹となる家電事業の収益力を強化し、成長分野への投資に充てることが将来にわたる持続的な企業の発展に不可欠であると考えています。
高橋 お客さまの数だけニーズがあるのなら、それらの多様なニーズに対応できる経営を進めていきたいと考えています。しかし、そのニーズを探すためには現場の声に耳を傾け、それを形にする執行役員会、監督する取締役会の連携が重要です。そして、判断する確かな取締役会の存在が必要です。私は、もう一度原点に立ち返り、着実にPDCAを回し、絶えず変化するお客さまの多様なニーズに応えられる経営を実現しなければならないと考えています。
内藤 基軸となるのは、やはり家電販売です。そこから得た利益を新規事業への投資に回していくというのがJoshinのあるべき姿です。
内藤 家電を中心に、その周辺で新規事業をいかに伸ばしていくかが、Joshinの将来を決めるだろうと思います。新社長の考えは、家電を軸として消費者や社会の役に立つ事業領域を広げていくものだと捉えています。Joshinはとても真面目な会社です。環境の問題や人権の問題だけでなく、実は商売にもそれが見てとれるのです。これらが投資家の皆さまに与える安心感は、当社にとっても非常に大事なもので、私はもっとアピールすべきだと考えています。
山平 私も、利益創出の中心は家電事業にあると認識しており、この領域での収益確保が成長の前提になると考えています。これから、企業環境のさまざまな変化に対応するためには、大胆な経営戦略と、ビジネスモデルの変革が不可欠です。従来の販売方法をさらに進化させ、新たな付加価値を加えることで、一層の利益拡大につなげていけると考えています。成長戦略の基盤となるのは、企業内部の経営資源、すなわちヒト・モノ・カネ・情報です。当社は豊富なお客さま基盤と確かな技術力を有しており、これらを強みとして活かしながら、具体的な成長戦略を展開し、推進していけると思います。私が最も期待しているのは、新社長のリーダーシップと決断です。これまでの枠を超えたチャレンジによって、当社の新たな成長のステージを切り拓くことができると期待しています。
高橋 先に述べたように、現在の産業界では、「国内」「小売」「家電」というワードは、少子高齢化、消費行動の変化から、モノが売れないとネガティブな印象を持たれがちです。しかし、私は、ビジネスチャンスはまだまだ多くあると考えています。例えば、高齢化社会では「見守り」が必要ですが、これを家電の力で実現するための事業化を目指していきます。また、「防犯」に対してもIoTを駆使するなど、お客さまのお困りごとに対して確実に価値を提供していくことが可能です。未来へのロードマップとしては、2028年が次期中期経営計画の区切りになりますが、そこに向けて会社の基盤を強固に、かつ安定化させると同時に、新たな領域をしっかり検討しなければなりません。現在の事業領域の延長線上にあるマーケットは積極的にシェアを獲得していくとともに、社会に役立つビジネスを創造していきます。私たちが目指す形のキーワードは、スピード、クオリティー、プライスです。現在、オンライン技術を活用した、お客さまの利便性を高め、営業現場の生産性を向上させる営業支援システムの構築を進めています。何事にもスピード感を持って対応しつつ、品質は堅持し、価格も重視する、といった方針をもって挑んでいきたいと思います。
