新生Joshinの変革を支える取締役会の役割

社名変更に表れた新生Joshinの変化

若手の提言を経営につなげ、守る価値と目指す姿を明確にする

内藤 今回の社名変更は、単に名称を変えるだけでなく、新生Joshinとして今後どのような会社を目指すのかを示す重要な意思決定でした。中でも象徴的だったのは、若手社員を中心としたプロジェクトから提案が生まれたことです。Joshinの未来を担う社員が、自分たちの会社の将来を考え、経営陣に提言した。取締役会がその提案を受け止め、意思決定につなげたこと自体に、大きな意味があります。

 

河野 私も、そのプロセスを高く評価しています。社名変更の検討では、結論を決めてから提示するのではなく、若手社員が主体的に考えられる枠組みがつくられました。Joshinの最大の財産は、これまで築いてきたお客さまとの深い関係性です。その価値を守りながら、従来の事業や組織の枠を超えて変わっていく。社名変更は、その意思を組織全体で共有し、新生Joshinとして目指す姿を明確にする節目になったと思います。

 

高橋 社名変更の機運が社内で高まり、若いメンバーによるプロジェクトチームの議論を経て結実したのが今回の社名変更です。お二人のお話にもあったとおり、経営者と従業員がそれぞれの立場で「新生Joshin」として変革を進めていく強い意思が込められています。時代にそぐわなくなったものは手放し、変えるべきを変えていく一方で、Joshinとして受け継ぐべき価値は確固たるものとして守り抜く。その守るべきものとは、お客さまとの「信用と信頼」、そして社是「愛」に基づく「まごころサービス」です。この軸をぶらさずに、家電販売という枠だけにとどまらず、お客さまの暮らし全体を支える「マチの電器屋」へと進化していかなければなりません。

変革を支える取締役会の変化

執行と監督の役割を明確にし、変革の実行力を高める

内藤 「マチの電器屋」という目指す姿を実現するには、執行側が自ら判断し、取締役会が適切に監督する体制が欠かせません。当社は2025年に監査等委員会設置会社へ移行し、業務執行に関する決定権限の大半を取締役または執行役員会に委譲しました。しかし、最初から設計どおりに機能したわけではありません。権限委譲後も、執行側が社長や取締役会の意向を探る一方、取締役会側も細かな報告を求めすぎる場面がありました。モニタリングと執行への介入の境界について、さらに認識を共有する必要があります。

 

高橋 執行側にとっても試行錯誤の1年でした。何を、どの程度、どのように報告すべきかわからず、活動報告に終始したり、逆に要点を絞りすぎて判断に必要な情報が伝わらなかったりすることもありました。ただ、1年を経て、取締役会が何を確認したいのか、執行側がどこまで責任を持って判断すべきかが、徐々に共有されてきました。目指す方向が明確になる中で、執行役員会はその実現に向けて自ら考え、取締役会は進捗やリスクを監督する。それぞれの役割がかみ合い始めたことも、足元の業績改善を支える一つの要因だと捉えています。

 

河野 執行役員会の議論にも明確な変化を感じます。現在は、一人ひとりが担当領域の課題と次にすべきことを自身の言葉で語るようになりました。取締役会が確認すべき指標も、売上高や利益率だけでなく、アクティブ会員※数や、リアル店舗とECの両方を利用するお客さまの動向など先行指標へと広がっています。執行と監督は対立するものではありません。共通の目標の実現に向け、それぞれの立場からスピード感をもって貢献する関係が整いつつあります。

※アクティブ会員:1年間に1回以上当社で商品・サービスを購入されたお客さま

変革を担う経営人財と組織づくり

現場力を経営力へ転換し、多様な人財と自律的な組織を育てる

内藤 執行役員会が自ら考え、判断するには、それを担う経営人財の変化も欠かせません。現在の執行役員の多くは、店舗運営のプロフェッショナルです。それは大きな強みですが、既存の事業モデルを変革するには、外部の視点を取り入れ、資本効率や全社最適の観点から判断する力が求められます。店舗投資についても、従来以上に資本効率や投資回収を意識した議論へ変わりつつあります。取締役会は個別店舗の出店や閉店の是非に介入するのではなく、執行側の判断基準や物差しが明確になっているかを確認する役割を担います。

 

河野 店舗運営で培った経験を、全社視点での経営判断へ広げていく必要があります。そのためには、現在の人財を育成するとともに、管理系人財やキャリア採用人財、女性など、多様な経験を持つ人財を経営層に登用していかなければなりません。指名・報酬委員会でも、サクセッションプランや次世代経営人財の選抜・育成を議論しています。一方で、変革は経営層だけで進めるものではありません。地域のお客さまを最もよく知る現場が、自ら課題を捉え、新しいサービスを提案できる組織へ変わることも重要です。

 

高橋 経営人財の育成は喫緊の課題です。当社では、次世代候補者を段階別に選抜し、期待する役割を明示しながら育成する取り組みを始めました。今後は、成長を促す経験機会の提供に加え、取締役会との接点を増やすことで「経営者視点」を育むことがテーマとなります。こうした次世代の育成と並行して、現在の執行役員が持つ「現場力」を「経営力」へと昇華させ、社内外の多様な知見を掛け合わせていくことも不可欠です。次世代の層を厚くすることと、現体制の変革実行力を高めること。この両輪を回すことこそが、当社の持続的な成長基盤になると考えています。

「マチの電器屋」が拓くJoshinの未来

お客さまとの信用と信頼を起点に、暮らしと社会の課題を解決する

内藤 Joshinは、業界の大手企業と同じことをして競うのではなく、独自の価値を生み出すチャレンジャーであるべきです。「マチの電器屋」は、そのための重要な構想です。取締役会としても、一定のリスクがあるからといって挑戦を止めるのではなく、経営陣の適切なリスクテイクを後押しする必要があります。一方で、施策が期待した成果につながっているのかを、KPIや資本効率を通じて監視・検証しなければなりません。また、投資家の皆さまとの対話を増やし、資本効率をはじめとする外部の視点を、取締役会の議論に活かすことも重要です。

 

河野 私は、「マチの電器屋」が実現すれば、Joshinは大きな社会価値を発揮できると考えています。これから一人暮らしの高齢者が増える中で、電球の交換や家電の使い方、見守り、デジタル機器の活用など、暮らしには多くのお困りごとがあります。Joshinには、配送や工事を通じて、お客さまのご自宅に上がることを許されてきた信用があります。その接点を、商品を届けるだけで終わらせず、「何かお困りごとはありませんか」と一歩踏み込むことで、提供できる価値は大きく広がります。こうした取り組みを広げていくことで、超高齢社会における暮らしの安心や家庭内のカーボンニュートラル、さらにはシニア人財の活躍にもつなげられると考えています。

 

高橋 お二人の話を受けて、あらためて「マチの電器屋」を必ず形にしなければならないと感じています。私たちは商品を売ることだけに注力するのではなく、お客さまのお困りごとにとことん向き合い、解決する会社にならなければなりません。リアルのリソース(人財や店舗、配送・工事の力)にデジタル技術を組み合わせ、他社ができないこと・やりたがらないことにも挑戦していきます。こうした行動を通じて、「何か頼むならJoshin」と思っていただける信用と信頼を築き、お客さまとの関係をさらに強固なものにしていきます。そこから生まれる基盤を持続的な成長と中長期的な企業価値の向上へつなげるとともに、株主・投資家の皆さまにも、私たちが目指す姿とその進捗をしっかりとお伝えしていきます。執行側と取締役会が同じ方向を向き、新生Joshinとしての変革を着実に実現していきます。