インフラ戦略担当役員メッセージ

当社グループの強みである「環境のJoshin」を
お客さまをはじめステークホルダーに対して
しっかりブランディングしていくことで、
ビジネス(収益事業)に大きく寄与してくるもの
と考えています。

 

取締役 兼 常務執行役員

インフラ戦略担当

横山 晃一

環境課題への取り組みとその意義

当社グループにおける環境への取り組みは、1998年に環境理念を制定し、2000年には本社ビルにてISO14001の認証取得をし、環境マネジメントシステムの構築・運用を通じて、環境負荷軽減と環境パフォーマンス向上への継続的な取り組みを推進してきました。また、「脱炭素」へ向けた気候変動問題への取り組みは、当社グループの7つのマテリアリティの一つである「地球環境と調和した豊かな社会への貢献」を実現するための重要な取り組み課題となっています。
 将来における人々の環境に対する関心度の高まりは、先進的に環境課題に取り組んできた当社グループにとって大きなビジネスチャンス(機会)になると捉えており、環境配慮型製品の販売強化はもとより、EV関連ビジネスの拡大、将来的な家庭向け再エネ電力の取り次ぎビジネスの実現可能性などを通じ、「家庭のカーボンニュートラルの実現」という社会価値を創出し、企業価値の向上につながるものと考えています。また、各事業所で使用している電力の再エネ化(再生可能エネルギーへの転換)に向けた取り組みは、将来的にカーボンプライシングが導入された時の温室効果ガス排出量に応じた企業の金銭的な負担額低減にも大きく貢献します。
 さらには2050年カーボンニュートラル達成に向けて、サプライチェーン全体におけるGHG排出量削減が求められてくる中、GHG排出量の適正な算出による可視化と削減に向けた積極的な取り組み、そこから得られるノウハウの蓄積は、当社グループにとって家電メーカーをはじめとするお取引先さまとの持続可能な取引関係を維持するためにも、必要不可欠な要件であると考えています。
 あらためて後述しますが、さまざまな国際イニシアティブ・外部イニシアティブにも積極的に参画するなど、当社グループとしてできることから着実に実行に移し、成果に結びつけてきました。
 その結果、これまでの当社グループの環境への取り組みを俯瞰した時、業界内においても、また小売業全体においても一歩先を進んでいる環境先進企業の中に入っていると自負しています。
 当社グループが上場するプライム市場は、海外投資家の投資対象になるような企業が上場する市場と位置づけられ、コーポレートガバナンス・コードによって英文開示やTCFDなどの枠組みに基づいた開示の質と量の充実が要請されています。
 そのような背景の中、気候変動問題に先進的に取り組んできたことは、投資家をはじめすべてのステークホルダーからの当社グループに対する社会的な評価の向上につながっており、 今後も当社グループに対するイメージアップやブランディングの強化によって消費者の購買意欲の喚起につなげていけると考えています。
 また、近い将来、気候変動問題に取り組むことは、企業にとってごく当たり前の時代になっていくことから、今、先進的に取り組むことに大きな意義があります。

2023年度の取り組みと成果

 当社グループは小売業であり、製造業のように工場を所有しているわけではありません。では、小売業である当社グループが「脱炭素」に向けて何ができるだろうかと考えた時、当社グループが排出するGHG排出量の大半が店舗(事業所)における電力の使用によるものであったことから、まずは各事業所で使用している電力の再エネ化を最優先に考え、着実に実施してきました。
 自社にて直接受電契約をしている事業所の再エネ比率100%達成、さらに、設置可能なすべての事業所に太陽光発電システムの100%設置完了は、当社グループが公表している環境課題におけるロードマップにおいて、2023年度中に達成することを目指して取り組んできたアクションプランであり、いずれも2023年度に計画どおりに達成をすることができました。
 今後はテナントを含む全事業所における電力の100%再エネ化を2040年までに達成すべく、継続した取り組みとして賃貸人に対して再エネ導入交渉を粘り強く実施してまいります。太陽光発電システムの設置に関しては当社事業所敷地内に太陽光パネルを設置する場所がなくなることから、当社の事業所の敷地外に太陽光パネルを設置するオフサイト型コーポレートPPAの導入を積極的に推進し、自社で直接受電契約をしている事業所の総消費電力量に占める自家消費率は2030年に25%、2050年には50%を目指しています。
 次に、国際的戦略の一つで、かねてより申請をしていました2030年に向けたGHG排出量削減目標がパリ協定の求める水準と整合した科学的根拠に基づいた目標であるとして、SBTの認定を取得することができました。
 そして、2023年度の最大のトピックスは、2021年度から回答を開始したCDP気候変動プログラムの情報開示において、CDPの最高評価であるAスコアを獲得したことです。 回答初年度である2021年度がCスコア、2022年度は1ランクアップのBスコア、そして3年目である2023年度に2ランクアップのAスコアを獲得することができました。
 2023年度にCDPの質問に回答した日本企業は1,985社、その中でAスコアを獲得した日本企業は当社を含めてわずか112社でした。これは当社グループの気候変動問題に対する取り組みと情報開示が国際的に高いレベルにあると評価いただいた結果であると認識しており、2024年度以降についても、開示内容の質と精度を上げAスコアを維持できるように取り組んでまいります。
 さらには、ESG(環境・社会・ガバナンス)に積極的に取り組んでいる日本企業を対象にした株価指数「FTSE BlossomJapan Index」の構成銘柄に2023年に続き、2年連続で選定され、加えて低炭素経済への移行に関するリスクと機会への対応の質などを評価する「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄には、3年連続で選定されました。両指数は世界最大規模の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人「GPIF」がESG投資の投資判断基準として採用しているものです。
 今後もサプライヤーの皆さまとのエンゲージメントを通じてGHG排出量の削減、すなわちSBT目標への対応をしつつ、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを通じて、当社グループ事業との関わりの強化、そして新たな環境ビジネスにつなげていきたいと考えています。

今後に向けた課題として

当面の課題でもありますが、当社グループの強み「環境のJoshin」をお客さまをはじめステークホルダーに対してしっかりブランディングしていくことで、ビジネス(収益事業)に大きく寄与してくるものと考えています。
 ブランディングの確立に向けては、事業所におけるサイネージやホームページを通じて、CDPの取り組みでのAスコア獲得や自社受電契約事業所の再エネ比率100%達成などを強く訴求してまいります。
 一方で、従業員に対する環境啓発不足に伴う環境配慮型製品への販売力低下などを防止する目的で、環境啓発を主としたスキルアッププランの体制構築も進めています。
 その結果として、従来より販売に注力してきた家庭のカーボンニュートラルに資する商品である環境配慮型製品やリフォームの販売を一層強化し、創エネ・蓄エネ・省エネ性能の高い製品の普及を促進していくとともに、家庭用のEV充電設備をはじめとしたEV関連製品の提案力強化・販売促進により収益力の強化を図ります。
 次に、生物多様性に係る取り組みですが、気候変動は生物多様性の損失を招く主要因の一つであって、カーボンニュートラルと生物多様性の損失を止めて軌道回復に乗せることを意味するネイチャーポジティブの2つを両輪で進める取り組みが必要であると考えています。2023年9月、自然資本に関する情報フレームであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)がリリースされました。この自然関連情報の開示を通して、企業による生物多様性保全の取り組みが急速に進むと想定されていますし、将来的にはTCFDと同様にTNFDのフレームによる開示が義務づけられると考えています。
 当社グループは「生物多様性の保全」をマテリアリティにおける課題解決の一つとして捉え、店舗の開設・商品調達・配達工事・使用済み商品の廃棄リサイクル等々、小売業という立場で自然資源に対してどのように接しているのかという接点、つまり自然への依存と影響、リスクと機会を特定・分析するためのLEAPアプローチから取り組みを始め、まずはTNFDの簡易的開示ができるレベルまで進めていきたいと考えています。そして、この生物多様性に係る取り組みについても「環境のJoshin」のブランディングにしっかりとつなげていきたいと考えます。