
多様な人財の活躍を企業価値の向上と
経営理念の実現につなげていきます
取締役 兼 常務執行役員
経営企画・人財戦略担当
田中 幸治
当社グループは2050年を見据えて「人と社会の未来を笑顔でつなぐ」を経営理念と定め、その中間点である2030年のあるべき姿として「地域社会の成長を支え、人と環境の未来に貢献する企業」を目指しています。そして、「高齢社会のレジリエンス強化支援」と「家庭のカーボンニュートラルの実現」の2つの社会価値の創出により、サステナブルな社会の構築に貢献する経営を推進しています。
当社グループの中期経営計画のテーマは「お客さまの暮らしに寄り添う『コンシェルジュ』へ」です。これは人財育成の不変のテーマでもあります。お客さまの多様なニーズに応えられる【人財の確保】、新たな成長事業を支える【人財の育成】、【従業員エンゲージメントの高度化】の取り組みを“新たなお客さま満足=新たなビジネス”の創出につなげ、企業価値の向上に結びつけていく人財戦略は、サステナブルな社会への貢献を目指す経営戦略と一体であると考えています。
当社グループの7つのマテリアリティの一つ「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を柱とする人財戦略によって、経営環境の変化に柔軟に対応できる多様な人財の確保と育成、そして従業員エンゲージメントの高度化を推進していきます。
当社グループは、「家電」「エンターテインメント」「リフォーム」「モバイル通信」「サポートビジネス」の5つのカテゴリで事業を拡大しており、それらを支える従業員の定着率が事業の成長力を大きく左右します。高い定着率をさらに向上させることにより従業員の専門性を高め、お客さまとの長年の信頼関係が高付加価値の生活提案及び利益率の向上に結実します(詳細は65ページ参照)。経営の安定基盤である家電事業では、家電製品アドバイザーの資格保有率を84.2%まで高め、約300人の電気工事士、工事担任者を育成し専門性を追求してきました。
今後の課題は、成長事業における人財の確保です。家電事業においてIT人財の育成及びICT実装による省人化を進め、CSを向上させつつ成長事業へ人財をシフトしていく必要があります。
中でも、リフォーム事業は当社グループが目指す「高齢社会のレジリエンス強化支援」と「家庭のカーボンニュートラルの実現」の2つの社会価値に深く関係し、家電事業とのシナジーが期待できる成長分野です。
リフォーム市場は、新築住宅の価格高騰や空き家の増加などを背景に住宅の「ストック循環」「高機能化によるQOL向上」のニーズに支えられ、また、超高齢社会における介護リフォームやGHG排出削減に向けた住宅省エネ化の需要などにより着実な成長が見込まれます。多様化するニーズに対応するリフォームメニューの拡充が必要であり、住環境分野における専門性も追求していかなければなりません。介護リフォームのエキスパートである福祉住環境コーディネーターの育成が急務で、大規模案件に対応できる建築士、インテリアプランナーの確保など施工体制の拡充も課題です。人財のシフトにより販売・施工体制を強化し、リフォーム事業の成長を支えていきます。
また、従業員の能力と経営参画意欲を最大限に引き出し、持続的成長を支える組織力を強化することも経営の重要課題です。社会が抱えるさまざまな課題=潜在ニーズに対する感度を研ぎ澄まし、多様な人財の自由な発想から生まれるアイデアを新たなビジネスに結実させることができるレジリエントな組織を構築する。これが当社グループのサステナビリティ経営です。
“新たなお客さま満足”の創出に向け、当社グループは現在、D&Iを戦略の柱として、多様な人財の確保・育成に取り組んでいます。多様性の確保を目指すD&Iの基盤となるのが「人権尊重」という普遍的な価値観であり、多様な人財が持つポテンシャルを最大限に引き出し、組織のパフォーマンスを最大化する取り組みが「健康経営」です。
当社グループの人財戦略は、多様な人財が最高のパフォーマンスを発揮し、活躍できる労働環境を整備することで、“働きやすさ”を“働きがい”へ、そして“従業員オーナーシップ”へ、さらには“従業員エンゲージメント”の高度化へとスパイラルアップさせる取り組みです。
「JT-2025 経営計画」初年度の2023年度はROE、ROA、ROICなど資本収益性の指標が計画を下回りましたが、人財の専門性追求の成果として売上総利益率は前期の25.4%から26.0%へと改善させることができました。2013年度の20.2%から、直近10年で5.8ポイントの向上を実現しています。次ページのグラフにおける「人的資本RoI」では投資の即効性は見られませんが、継続的な人財投資による『コンシェルジュ』の育成が生活提案型の高付加価値販売につながり、利益を底上げしています。
当社グループは2024年5月、従業員向け業績連動型株式報酬制度を導入しました。その目的は、従業員の帰属意識や経営参画意欲を醸成し、業績や株価上昇への意識を高めることで、当社グループの中長期的な企業価値向上を図ることにあります。業績向上の成果として自社株式を付与し、経済価値を共有することにより、Joshinと従業員の一体感が生まれ、ステークホルダーと利害を共有することにもつながります。会社と従業員が同じ目線で経済価値を創出するパートナー経営を目指して、従業員エンゲージメントを起点とする企業価値向上の好循環を生み出すきっかけにしたいと考えています。
会社と従業員が経営のビジョンや価値観を共有しながら、従業員の一人ひとりがJoshinブランドに“絆”を感じて自発的に能力を発揮し、新たな社会価値の創出に積極的に貢献する意欲を引き出すことが人財戦略の目指す姿です。従業員の積極的な経営参画による“新たなお客さま満足”を企業価値の向上につなげ、経営理念「人と社会の未来を笑顔でつなぐ」を実現します。

従業員が一人ひとりに合った柔軟な働き方を選択でき、また、その働き方が受容される職場環境を整備いたします。さまざまな価値観やライフスタイルをもつ従業員が「働きやすさ」を感じながら就労継続できる制度や環境を整えてまいります。
- 介護相談窓口の運用開始(24時間365日、無料で電話相談可)
- 育児短時間勤務制度利用期間を子が中学校卒業までに拡大
- 育児短時間勤務制度勤務シフトを多様化
<2023年度>
- 介護短時間勤務制度の勤務シフトを多様化
- 休日保育費の補助制度新設
チームと自らの役割を認識し、当事者意識をもって向き合う姿勢をもつことで、個人のみならず組織のパフォーマンス向上につながります。自ら学び成長する機会として、各階層での研修を実施しております。
- 入社3年目社員対象「セルフリーダーシップ研修」によるキャリアオーナーシップの確立
- 50歳を迎える社員対象「キャリアプラン研修」による中高年期のキャリア形成支援
- 通信教育の推奨と修了時の補助金(費用の75~100%)支給
<2024年度>
- 女性のキャリア意識形成フォーラム開始
十分なコミュニケーションにより上司からの期待が本人に伝えられ、自らの役割を明確に認識すること、そして役割に応じて適切に評価され、公平な機会を与えられることが、働きがいにつながります。
- エンゲージメント・サーベイ(2023年度導入)結果をきっかけとした現場の対話促進
- 従業員の意見を基にした多様な働き方の構築
- マネジメントレビュー面談の実施
- 自己申告書による適材適所配置
<2023年度>
- 人事制度における勤務地選択による昇格制限の撤廃(一部緩和)
- 役職定年制度の改定:役職定年時の資格等級を維持
従業員が会社の存在意義や方向性に共感できれば、従業員と会社の信頼関係は深まり、従業員エンゲージメント向上につながります。当社グループは、従業員エンゲージメントの向上による新たなお客さま満足の創出を持続的な成長と企業価値の向上につなげてまいります。
- ダイバーシティ・カウンシルを通じた従業員の経営参画による従業員エンゲージメントの向上
(全社Webアンケート「J‑Voice」や社内コミュニティによる意見発信、カウンシルによる多様な働き方の企画・立案)
<2023年度>
- エンゲージメントサーベイ活用推進チームの編成、取り組み開始
事業ステージに連動する人財像

人的資本投資


現在は人財の力を最大限に引き出し未来価値を生み出す
ための先行投資を行っています。今後も継続的に投資する
ことにより、将来のリターンを生み出していきます。
※1 お客さまご満足度(%)=Webアンケート「総合ご満足度」の「大変満足」+「満足」
※2 人的資本RoI:ISO 30414指標
[売上– {販管費– (給与及び手当+賞与+法定内外福利厚生費)}]÷(給与及び手
当+賞与+法定内外福利厚生費) –1
※3 2019年度は、電子プライスの大型投資を実施
人財戦略
社内環境整備方針
当社グループでは、多様な人財の活躍こそが、新たな事業価値を捉えて持続的成長につなげていくための組織力の源泉であると考えています。「生活インフラのHub」となって社会に貢献することを通じて、当社グループの企業価値を向上させるためには、社会が抱える課題やニーズを捉え新たな価値を生み出すことが必要です。そのために当社グループでは、一人ひとりが公平な機会を与えられ、心身ともに健康で働きがいを感じながら活躍できる社内環境を整備していきます。
そして、多様な人財の自由な発想から生まれるアイデアを新たなビジネスに結実させ、サステナビリティ経営を推進していきます。
経営理念の実現に向けた人的資本KPI
